ボランティアLIFE


現在2頭目となるパピーのプリモ(ラブラドール・レトリーバー、オス、8か月)を育成中の山科さん一家。左から順に母親の智子さん、息子の諒さん、父親の誠さん。「パピーの成長を間近で見守れることが一番の醍醐味」だと話します
「小学生の頃に読んだ盲導犬の本がきっかけで、長年パピーウォーカーに憧れていました」と笑顔で語る山科智子さん。子育てが落ち着いたタイミングで、夫の誠さんや息子の諒さんとともにボランティアに応募し、現在は2頭目となるパピー、プリモの育成に励んでいます。家族全員で協力しながら犬と向き合い、愛情を注ぐ日々。パピーウォーカーとしての苦労や喜び、そしてプリモが家族にもたらしてくれた心温まる変化について、たっぷりとお話を伺いました。
智子さんがパピーウォーカーというボランティアを知ったのは、小学生の頃に読んだ盲導犬に関連する本がきっかけでした。「いつか自分もパピーウォーカーになってみたい」。その長年の憧れは、家族の理解と協力によって現実のものとなりました。誠さんにとっても、犬を飼うことは以前からの希望だったといいます。さらに夫婦には「犬を育てるという経験が、子供にとって貴重な体験になるはずだ」という強い思いがありました。
子育てがひと段落し、家族で新しいことに挑戦できる環境が整ったタイミングで、一家はパピーウォーカーのボランティアに応募しました。自分たちの手で育てた子犬が、将来誰かの目となり、社会の役に立つかもしれない。そんな期待と少しの緊張を胸に、山科さん一家のボランティアライフが幕を開けました。

1頭目のアムール。やんちゃでいたずら好きな一面もありましたが、家族に「犬を観察する目」と「育てる喜び」を教えてくれたそうです
山科さん一家にとって、初めてのパピー育成となったのはゴールデン・レトリーバーのオス、アムールでした。フランス語で「愛」を意味し、「愛に恵まれるように」という願いが込められたアムール。初めての犬との生活は、もちろん楽しいことばかりではなく、戸惑うこともたくさんありました。特に苦労したのが、散歩の練習や興奮のコントロールでした。一家は、「アムールはやんちゃな時期が長く、どう接すればよいのか悩むこともありました」と振り返ります。毎月のパピーレクチャーで訓練士に相談し、一つひとつ課題に向き合いながら練習を重ねました。

1頭目のアムールを育成した学びのおかげで、智子さんはリードの扱いや歩くテクニックをしっかりと身につけました。その経験が生かされ、現在育てているプリモとの毎日の散歩もスムーズに楽しめているそうです
愛情を込めて育て上げたアムールを無事に協会へ送り出した後、訓練士から「1頭目を育てて犬を観察する目が養われているから、ぜひ2回目も挑戦してほしい」と背中を押されました。この言葉が大きな自信となり、一家は2頭目のパピーを迎え入れる決心を固めたのです。
現在、山科さん一家が育てているのは、ラブラドール・レトリーバーのオス、プリモです。イタリア語で「いちばん」を意味し、「家族にとって特別な存在になってほしい」という深い愛情が込められています。

まだあどけなさが残る、委託されたばかりの幼き頃のプリモ。元気いっぱいに遊びながら、人と一緒に過ごす楽しさを学んでいます
現在、生後8か月になるプリモは、委託当時から非常に穏やかで優しい性格をしています。「一時期、反抗期のような振る舞いを見せることもありましたが、今ではすっかり落ち着きを取り戻し、家の中でもほえることなく、おとなしく過ごしています」と一家は話します。
「アムールのときに訓練士さんと相談しながら重ねた経験が、プリモの育成にとても生かされています。1頭目のときよりも、犬の成長の細かい変化に気づけるようになり、私たち自身の対応も向上したと感じます」と、智子さんは自身の成長も実感しています。
穏やかなプリモとの生活でも、課題がまったくないわけではありません。例えば排泄(はいせつ)の管理について、散歩のタイミングでおしっこはできても、うんちがなかなか出ないという悩みがありました。そんなときは、パピーレクチャーなどを通じて担当の訓練士に具体的なアドバイスを仰ぎました。訓練士の助言をもとに、排泄前には家の中で階段の上り下りなどの運動を取り入れることを実践。試行錯誤を繰り返すなかで、適切な運動を取り入れるとスムーズに排泄できるようになり、見事に課題を解決しました。

貸し切りドッグランでのプリモ。息子の諒さんは「いつもとは違って、速く走るプリモを見てかっこよかった」とうれしそうに話してくれました
また、プリモのトレーニングにおいては「夢中作り」という手法を大切にしています。犬が何も関心を示していないときに名前を呼んでも効果が薄いため、おもちゃを獲物に見立てて遊び、まずは犬を夢中にさせることが重要です。プリモが遊びに夢中になっている瞬間に、名前と「グッド」という言葉を組み合わせて褒める。このように「人と一緒にいることは楽しい」と関連付ける声掛けを実践することで、プリモの反応やモチベーションが驚くほど変わっていくのを実感しているそうです。
プリモの育成は、一家みんなで楽しく分担しています。母親である智子さんが総監督として日々の世話の他にスケジュールを管理し、誠さんは夜間の様子チェックやケアを担当。放課後には、諒さんが智子さんと一緒に散歩に行ったり、遊んだりして、家族全員で愛情たっぷりにプリモを育てています。
家族そろって月1回のパピーレクチャーに参加することもあり、そこで得たアドバイスはすぐに共有・実践し、一貫した対応ができるよう心がけています。家族間で一貫性を保つためのルールも徹底しています。プリモを褒めるときは必ず名前を呼びますが、注意をするときは名前を呼ばずに「ダメ」「ノー」と短く伝えます。また、感情的に怒るのではなく、行動が正しいか正しくないかを冷静に伝えることを意識しているそうです。同時に、犬を過度に構いすぎず、プリモが落ち着いて一人で過ごす時間も尊重しています。
プリモが生後5か月のとき、家族で那須のコテージへ旅行に出かけました。初めての旅行でしたが、プリモは新しい環境でも落ち着いて過ごすことができ、山科さん一家はホッと安心したそうです。この経験は、プリモ自身の成長を感じられたのはもちろんのこと、一家にとっても「自分たちの育て方で大丈夫なんだ」という大きな自信につながりました。
「プリモが来てから、家の中での会話がさらに増えて、いつも笑顔があふれるようになりました」と智子さんはうれしそうに語ります。家族みんなで愛情たっぷりにプリモを育てる日々。パピーの成長を間近で見守りながら、家族自身も癒やされ、元気をもらっています。プリモの存在が、家族の絆をよりいっそう深めてくれているのです。

家ではおとなしいプリモですが、ドッグランでは元気いっぱいに走り回ります。家族と一緒に思い切り遊ぶ時間が、プリモにとっても何よりの楽しみになっているようです
パピーウォーカーとしての活動は、家庭内だけでなく、地域社会との新しいつながりも生み出しています。プリモを連れて近所を散歩していると、近隣の方から声を掛けられることが増えました。ボランティア活動の存在を知らない人に対して、盲導犬育成の意義やパピーウォーカーの役割を伝える機会も多くなり、地域での温かいコミュニケーションが活発になっているそうです。

パピーウォーキング修了式でのアムールと山科さん一家。アムールと過ごしたかけがえのない日々への感謝と誇りを胸に、笑顔で新たな一歩を送り出しました。アムールから得た経験を生かし、現在育成中のプリモの修了式も笑顔で迎えられるよう、家族みんなで心を込めて大切に育てています
「将来、この子が誰かの支えになるかもしれない。そう思うと、日々の活動に大きな責任感と、それ以上のやりがいを感じます」と語る山科さん一家。これからの季節には、自然豊かな場所への旅行や、貸し切りドッグランで思い切り運動させるなど、プリモと一緒に楽しい思い出をたくさん作る計画を立てています。「犬と暮らす楽しさ」と「社会貢献への思い」の二つを胸に、山科さん一家はこれからも、笑顔と愛情たっぷりにプリモとの大切な時間を歩んでいきます。