ボランティアLIFE


アリスを囲むのは、右から上原佳織さん、次女の咲耶さん、三男の凉さん、夫の均さん。散歩などの日常のお世話は佳織さんが担当。凉さんは遊び担当で、一緒にボール遊びやお昼寝をします。留学中の咲耶さんは、テレビ電話でたくさんおしゃべりしてくれます。均さんは忙しいので、お留守番担当です(笑)
「アリス、ただいま」。上原さん一家の中心は、繁殖犬のアリス。家族は自然とアリスのもとに集まります。上原さん一家がボランティアを考え始めたきっかけは、「大型犬を飼いたい」という子供たちの希望でした。母・佳織さんは、実家で盲導犬の繁殖引退犬を飼うボランティアをしていた経験があり、家族で相談し、繁殖犬飼育ボランティアに登録。「犬を飼うには覚悟が必要。5人いる子供も上3人が巣立ったので、迎えるならそろそろかなと思って」と語ります。
アリスとの初対面でまず目を引いたのは、大きな体と長い手足。大きな体とは裏腹に「気が小さい。だけど人を信頼しきっている」というアリスは、家族以外の人にも穏やかです。寝ている時に夢をみるのか、寝言を言っている姿がとてもかわいいのだとか。「アリスに会いたくて家族の帰宅が早くなりました」と上原さん一家の暮らしも変わってきたようです。
繁殖犬の飼育では、特に体調管理が重要です。食事や運動に気を配る必要がありますが、佳織さんは「気負わずやっています」と自然体でアリスに接しています。交配のタイミングに合わせて訓練センターへ足を運ぶことも、あまり負担には感じていないそうです。いつの間にか、出かける先も外食も「アリスと一緒に行ける所」になっていました。「これが当たり前」と話す三男・凉さんも、ボランティアとして特別なことをしている意識はなく、家族の一員としてアリスを受け入れています。それでも、アリスの交配のタイミングがなかなかつかめずに何度もセンターに通った時は、体調面への心配はもちろん、無事に子犬を産めるのか不安を感じることもありました。
休日のお出かけは「アリスが一緒に行ける所」。茨城の海に行った時は、最初は怖がっていたアリスも、凉さん、咲耶さんと一緒にバシャバシャ遊んでいました
「普通に犬を飼っているだけ」と思っていた佳織さんですが、富士ハーネスで初めてアリスが生んだ5頭の子犬たちを見た時に、気付きがありました。「この中の一頭でも盲導犬になるかもしれない、と思ったら、私たちもアリスも大変なことをしているんだな、アリスを大切に育てていかないといけないな、と気が引き締まりました」。そして、職員から「アリスもここで生まれたんですよ」と聞いたとき、自分の中で何かがつながったように感じたといいます。アリスが大事に育てられてここにいることに感謝の気持ちが湧き、この子犬たちが盲導犬になってもならなくても、大事に育てられ、幸せになってほしいと強く感じました。

2024年12月11日に初めての出産。大役を終えて穏やかな母の顔
佳織さんの背中を見ながら「いつか保護されたシェパードを飼ってみたい」と語る凉さん。凉さんの言葉と、心を許しおなかを見せるアリスの姿にうれしさを覚える佳織さんです。