スタートライン
お気に入りの散歩コースをヨルと。朝は小学校に立ち寄り、登校する子どもたちを迎えるのが日課です
神奈川県藤沢市で鍼灸院を営む倉垣内聡美さん。外出が大好きで、毎日をアクティブに過ごす60代のユーザーです。今年のはじめに2頭目のパートナーとなったのは、尻尾の先がきゅっと曲がったところがチャームポイントの黒ラブ、ヨル。「最初に会ったとき、“あ、すなおな子だな”って思いました」と倉垣内さん。指示にもきちんと従い、道を覚えるのも得意。自分の知っている道へ行きたがることもありますが、「今日はこっちね」と違う道を指示すると、すっと気持ちを切り替えてついてきてくれるそうです。「うれしいときも大はしゃぎはしないんですよ。そっと手の甲に鼻をつけてきて…それがまた、かわいくて!」と声がやわらぎます。
今回の共同訓練の大きなテーマは、“ヨルとの新しい役割分担”でした。先代のパートナーであるアイジュとは、長く一緒に歩く中で、安心感から点字ブロックを頼りに歩くスタイルが自然と身についていました。一方、ヨルはセンターでの訓練を終えたばかりで、盲導犬歩行の基本である左側に寄って歩く動きがしっかり身についています。そこで共同訓練では、盲導犬歩行の基本に立ち返り、倉垣内さんは周囲の状況から自分の位置や目的地までの大きな方向をつかむ役割を担い、段差や角では点字ブロックに頼るのではなく、ヨルの動きに合わせて歩く方法を練習していきました。
訓練の中では、ハーネスの接続部分にも工夫を加えました。左右で大きさの違う金具を装着し、少し“遊び”をつくったのです。「それだけで、すっと力が抜けたんです。ヨルも歩きやすそうで、私も楽になりました」。この工夫によって、力を抜いて歩く感覚がつかみやすくなり、ヨルの動きに合わせる歩き方もより実感できるようになりました。当初は2週間での認定を予定していましたが、訓練士から「もう少しこの感覚を定着させてからにしましょう」と提案があり、倉垣内さんも同意して期間を延長しました。
季節の花が楽しめるお気に入りの公園でひと休み。遊びの時間には、大好きな「またくぐり」を楽しみます
日々の暮らしも、少しずつ息が合ってきています。朝4時に起きて給餌、6時半からは丁寧なグルーミング。「毛並みがきれいってよく言われるんですよ。うれしくて、つい念入りに」とにっこり。仕事中はケージで落ち着いて過ごし、ケージから出ているときは膝の上にちょこん。「ケージの中が落ち着くみたい。でも出ると甘えん坊なんです」。スキンシップの時間が、絆をさらに深めています。
盲導犬と歩こうと思ったきっかけは、イベントでの体験歩行でした。人混みの中をスムーズに歩けることに驚いた一方で、「見えない私に犬のお世話ができるのかな」という不安もあったといいます。その後に体験した手入れの練習で「これなら私にもできるかもしれない」と感じ、申し込みを決めました。子どものころに犬と暮らしていた思い出がよみがえり、その夢が今、ヨルとともにかなっています。「一緒にいると、生活の豊かさがぐっと上がります。かけがえのない相棒ですね」。
夏には、ヨルと一緒にどこか涼しい場所へ避暑の旅に出かけたいと考えています。「開放感のある場所を、ヨルと一緒に歩いてみたいですね」。新しい相棒と見つけた歩き方。倉垣内さんとヨルの毎日は、これからも少しずつ広がっていきます。