スタートライン


夫とオクターと暮らす蛭田さん。ほぼ毎日、買い物や散歩で外出し「散歩は3km から4km ぐらい歩いています」。天真爛漫なオクターは、蛭田さんが外で友人に出会ったりすると、うれしくて、はしゃいでしまうことも。友人には「そっと声かけてね」とお願いするなど工夫もしています
蛭田さんは、2003年から盲導犬をもって、これが4頭目となるベテラン盲導犬ユーザー。買い物、散歩、通院と、盲導犬は日々の暮らしに欠くことのできないパートナーです。今は便利なナビもあるけれど、「ナビより安全で正確だし、なにより心があります」と、今まで一緒に歩いてきたパートナーたちと築いた信頼はゆるぎないものです。
4頭目オクターとの共同訓練はスムーズで、あっという間の2週間でした。「これまでで一番くらいに、楽ちんな訓練」と蛭田さん。「私のところに来るまでに、しっかりやるべきことを訓練士さんとマスターしてきたからだと思います」。中でも、駐車場から不意に出てくる車に対して、盲導犬が自分で判断するという場面では、車が接近してきた際に、ぴたっと止まってくれたそう。現在住んでいる地域は、歩道のない道も多くトラックの出入りも頻繁なので「これは本当に助かります」。
訓練2日目、初めてオクターと長い距離を歩いたときには、歩調の相性がとても合ったという蛭田さん。「足が悪くてT字杖をついて歩くのですけど、それがオクターと一緒だと軽々と歩いてしまって」。このところ散歩も、そんなに長い距離を歩けなかったのに、あっという間に3km、4kmと歩いてしまい、思うように歩ける喜びに、感動のあまり思わず涙がこぼれたと振り返ります。

地域の動物専門学校を訪問。生徒や先生が勉強のためにと犬のシャンプーを担当してくれて、歴代の蛭田家の盲導犬がお世話になっています。こうしたつながりも大切な財産に
そんな、しっかり者のオクターも、蛭田さんとの生活に慣れてきてからは、「いやいや病」が始まってしまい、蛭田さんを困らせることも。「最近わがままを言いだして、家の階段の途中で動かなくなったりするんです」。散歩もいつもの道だと刺激がないのか、つまらなそうにのろのろ歩いたりすることもあったり。
でも、そこはさすがベテランの蛭田さん、「もしかして楽しくない?もっと一緒に遊んで楽しくしてみようか?」と、オクターが考えていることを推測して、試行錯誤します。「盲導犬といえども、1頭1頭性格が違い、接し方も違う。そのことを先代の犬たちが教えてくれたんです」と蛭田さん。その蓄積が今に活かされています。
「新しい盲導犬を迎えるのは、子育てのようなもの」と言う蛭田さん。これからは、電車に乗って遠出して、オクターにいろんな景色を見せてあげたいと言います。「春には姉の住む仙台に行きたい」と、夢を膨らませます。