Heart to Heart

盲導犬募金箱を手に笑顔を見せる栗原会長。温かな想いは社内をはじめ、周囲へと広がり続けています
宮城県仙台市に本社を構える株式会社盛総合設計。1946年の創業以来、「そのいい顔を、設計します。」という理念を掲げ、人や地域に寄り添ったまちづくりを推進してきた建築設計事務所です。同社は今年、創業80周年という大きな節目を迎えました。
協会との出会いは1999年。協会の「仙台訓練センター」の建築設計を手がけたことに遡ります。建物の誕生から始まった縁は、寄付金や街頭募金活動という形で四半世紀にわたって大切に育まれてきました。仙台訓練センターが開設25周年を迎える記念すべき年に、施設の設計を通して盲導犬や視覚障害への理解を深め、それをきっかけに始まった支援の歩みと、そこに込められた温かな情熱を紐解きます。
仙台訓練センターの設計にあたり、陣頭指揮を執ったのが栗原憲昭 (のりあき)会長でした。当事者の目線に立った施設づくりを目指した栗原会長は、神奈川訓練センターの視察や1泊2日で盲導犬の体験歩行会に参加。体験や当事者からの声を通して得たのは、大きな気づきでした。
当初はケガを防ぐため、柱を丸くするなど安全面を重視していましたが、視覚障害がある方々からは、「丸いと自分の位置が分かりづらく、明確な角や目印がある方が移動しやすい」という貴重な意見を受けたのです。 そこで、柱に角をつくるなど室内での位置関係を把握しやすくする工夫や、館内の様子を触って確かめられる触地図、トイレでの音声案内など、当事者目線での「使いやすさ」を徹底的に追求。細かな工夫を積み重ね、設計に落とし込みました。
この丁寧な仕事ぶりは高く評価され、完成後に宮城県より「宮城県だれもが住みよい福祉のまちづくり賞」を受賞。そして何より、設計のプロセスを通して盲導犬の賢さや社会における必要性を肌で実感したことが、盛総合設計が本格的に盲導犬育成支援へと踏み出す大きなきっかけとなりました。
センター設立以来、盛総合設計は社を挙げた街頭募金活動を続けています。特に毎年6月の創業時期に合わせて実施される募金活動は、会社の恒例行事として深く定着。
この活動は単なる社内行事として行うのではありません。事前に「盲導犬が一頭育つまでにどのようなプロセスがあるのか」「視覚障害者にとって盲導犬がどれほど重要な存在か」といった背景や意義を社内で共有。社員一人ひとりが納得し、理解したうえで参加できる体制を整えています。
盲導犬の役割や支援の価値を深く理解しているからこそ、社員の意識も自発的なものへと変化していきました。今では創業時期が近づくと、「今年の募金活動はいつですか?」と社員から声があがるほど、活動への思いが社内に浸透しています。 募金活動の当日は社員だけでなく、その家族や子どもたちも一緒に街頭へ。穏やかに寄り添う盲導犬PR犬とともに、自ら声をかけて支援を呼びかける体験は、子どもたちにとっても「自分たちの行動が誰かの役に立っている」という社会貢献の素晴らしさや誇りを実感する、かけがえのない機会となっています。
また同時に、チャリティゴルフ大会も開催、コンペの賞品には盲導犬のPR用グッズを活用するなど、楽しみながら支援の裾野を広げる工夫も重ねてきました。
声を出して想いを伝える街頭募金活動は、社員自身の意識を変え、自ら行動するきっかけにもなっています。人との交流を通して得られる気づきは、一人ひとりの成長につながり、その経験が自然と表情にも表れていきます。そうした社員の生き生きとした姿や、社内にあふれる活気こそが、同社が掲げる「いい顔を設計する」という理念そのもの。盲導犬支援への取り組みは会社案内などにも明記し、社会貢献に向き合う姿勢を社内外に発信しています。建物の造形美だけでなく、そこに集う人々の笑顔や、人と地域の幸せなつながりを生み出したいという想いが込められています。そうした想いのもと、日々の仕事だけでなく、社会とも真摯に向き合う姿勢が、お客様からの理解と信頼にもつながっています。

盲導犬PR犬を囲む盛総合設計の皆さん。創業80周年を迎えた今も、全社員一丸となり街頭募金活動を続けています
創業80周年を迎えた現在、経営のバトンは3代目へと受け継がれつつありますが、社会貢献への情熱が変わることはありません。 「視覚障害をお持ちの方に、盲導犬や周りのサポートを通して『日本で生活していて良かった、安心だな』と、暮らしやすさを実感してもらえるような社会にしていきたいんです。そのお手伝いを、私たちはこれからも続けていきます」と栗原会長は語ります。
盲導犬の正しい役割や理解を世の中に広めながら、盛総合設計はこれからも温かなまちづくりと支援活動を続けていきます。仙台訓練センターの開設25周年と、盛総合設計の創業80周年。四半世紀にわたって紡がれてきた、人と建築、そして盲導犬と視覚障害者をつなぐ温かな支援のバトンは、これからも受け継がれていきます。