俳優 佐々木蔵之介さん

NHK土曜ドラマ「チャレンジド」が始まりました。「チャレンジド」とは英語で障がい者のこと。失明した中学校の国語教師が盲導犬ユーザーとなり、幾多の困難を乗り越えたくましく生きていくヒューマンドラマです。主人公の塙啓一郎役、佐々木蔵之介さんに伺いました。
※盲導犬くらぶ56号(2009年10月15日発行)に掲載された佐々木さんからの応援メッセージを紹介します。
※NHKドラマ「チャレンジド」の放送は終了しました。
● 塙啓一郎役への挑戦
盲目の教師役であると聞いた時は、大きな責任を感じ、自分にどこまで演じられるのか不安でした。しかし、撮影が始まって1週間ほどで、見るべき点は塙啓一郎の何事にも向かっていく生き方であって所作ではないと気づき、楽になりました。事前のアイマスク体験で、誰かがしゃべっている間は感じませんが、周囲のだれもしゃべらなくなった時、自分と社会との関係性が非常に不安になりました。暗闇の中で、自分はどう見られているのか、自分とは何なのかを考え、その場の空気を耳や肌から感じとろうとしました。その経験が今回の芝居での礎になっています。
塙啓一郎は、病気で視力を失いリハビリを経て盲導犬ユーザーになります。教師としての復職を果たすほか、自分に何かを科しているのではないかと思えるほどいろいろなことに挑戦します。障がいをものともせず、いろいろなことをやり抜く姿勢、これほど痛快で、楽しい役は初めてでした。難しい役どころでしたが、この役に巡り合えて本当に感謝しています。

● 盲導犬ポン太は私たちのアイドルでした
ポン太役の盲導犬に初めて会った時、「いい子だな」と思いました。ハーネスを外した途端に家庭にいるペットと変わらなくなるのが、またかわいかったです。今、私の左側にいないのが寂しいですね。撮影中はみんながさわりたい中、唯一私だけが盲導犬にさわることができました。「撮影終了」の声がかかり、ハーネスを外したら、キャストの生徒たちが周りに撫ぜにやってきて、盲導犬は現場のまさにアイドルでした。私だけでなく、撮影で煮詰まってきたりしたときも、盲導犬がその場を和ませてくれ、私たちは随分救われたし、励まされました。
● 盲導犬と歩いた塙啓一郎
街を白杖で一人で歩くより盲導犬と一緒のほうが心強いと実感しました。障害物にぶつかる不安を軽減するだけでなく、盲導犬がいることで自分と社会をつないでくれるのです。盲導犬が自分を理解してくれ、支えてくれる、言葉こそ通じないが気持ちは通じている、そんな存在でした。うれしい時はともに喜び、さみしい時は共感もしてくれます。こちらの思いがそのまま伝わっていた感じでした。


● ドラマを通じて伝えたいこと
塙啓一郎は、教師ですが生徒と同じ目線に立って、生徒から友情や愛情を教えてもらい一緒に生きていました。人は周りに支えられ、生かされている、だから盲目ではあるけれど修学旅行も行き、マラソンもできたのです。塙啓一郎ののびのびとした生き方を演じるのは楽しかったです。
このドラマを見て、「励みになりました」とか「楽しかった」と言っていただければ、何よりもうれしく幸せです。一人でも多くの方にエールを送ることができるドラマになるといいなと思っています。塙啓一郎が「チャレンジ」することはまだまだあります。傍らに盲導犬ポン太がいるから自信を持てる。社会とつないでくれ、自信を生んでくれる盲導犬が増えることを応援しています。そしてそれが果敢なチャレンジを生み、盲導犬ユーザーそれぞれのドラマが続いていくといいですね。

●佐々木蔵之介(ささき・くらのすけ)
1968年京都府生まれ。実家は京都市内の造り酒屋で「蔵之介」という芸名は酒造にちなみ父親がつけたもの。89年大学在学中に演劇を始める。92年〜94年まで会社勤めを経験。その後、舞台、映画、TVで活躍中。2010年「ハンチョウ2〜神南署安曇班〜」(主演)が放送される。
