「まっくらカフェ」開催しました!
10月31日(日曜日)、仙台訓練センターでは第8回「さくまつり」が開かれました。年に1度の、地域の皆さんとの共催で開くお祭りです。町内会の方々による出店や農産物の直売、バザー、舞台でのだしものなどいろいろなお楽しみがあります。あいにくの雨模様となりましたが、なんと465人もの方々が仙台訓練センターを訪れました。
今年初めてのだしもののひとつが「まっくらカフェ」です。
これは、光のないまっくらな空間でお茶を飲んだりお菓子を食べたり、おしゃべりを楽しむというものです。実は「まっくら」を体験することって、この現代ではめったにありません。真夜中だって、どこかに明かりはあるものです。そしてわたしたちは、ふだん「見ること」に頼って生活しています。見ることをやめて、じっくり「聞く」」「においをかぐ」「さわる」「味わう」……。もしかしたら、新しい感覚を体験できるかも!というイベントなのです。視覚障害の疑似体験ではありません(視覚に障害のある方の見え方はさまざまで、真っ暗な中で暮らしているわけではないのです)。

仙台市では宮城県身体障害者福祉協会が、数年前から「福祉センターまつり」でこのまっくらカフェを行なっていますが、今回は特別に仙台訓練センターまで出張開店してくれました。さくまつりの前に「闇の仕事人」がやってきて、ふだんは会議などで使っている研修室を、みごとにまっくらな空間にしたのです。
そして当日、お客さんを席まで誘導し、コーヒーやお菓子を出してくれるアテンドさんが2名やってきました。おふたりとも視覚障害者、ベテラン主婦です。
カフェが開店すると、次々にお客さんがやってきました。
「目をつぶったのと同じことかなあ。」「少したてば目が慣れるでしょ。」など言いながらカーテンを入ると、そこはまっくら。びっくりして立ちすくんでいると、「こちらへどうぞ」とアテンドさんがやさしく声をかけて誘導してくれます。まっくらな中を、おっかなびっくり進んで、いすに座って飲み物を頼むと、アテンドさんがてきぱきと用意して持ってきてくれるのです。
ここではまったく光が入りませんから、目が慣れてまわりが少し見えるということがありません。いつまでもまっくらです。目の前に手をかざしてみても分かりません。そんな中では、いつもと感覚が違います。さわってみないと、聞いてみないと、となりに誰かいるかどうか分かりません。表情が見えませんから、声の調子に敏感になります。コーヒーやジュースの香りや、クッキーの味も、いつもとひとあじ違ったかもしれません。
でも何よりもびっくりするのは、まっくらでなんにも見えないのに、アテンドさんはこぼしたりひっくり返したり、やけどすることなく、温かいコーヒーをポットからカップに注ぎ、すたすたと持ってきてくれるのです。「アテンドの方たちは、暗い中でも見える特別なめがねをかけているんでしょう?」なんて声も出たほどです。
まっくらカフェから出てきたお客さんは、ちょっとほっとしながら、「おもしろかった、良い経験だった!」「また入ってみたい!」という感想でした。ふだんの生活ではできない体験をして、いつもは使っていない感覚を使ったことで、脳がリフレッシュしたのかもしれませんね。
今回、まっくらカフェのお客さんはなんと90人。アテンドのおふたりはフル回転でした。
混みあっていたために入るのをあきらめた皆さん、ごめんなさい。
来年も可能であれば2回目のまっくらカフェを開きたいと思っています。皆さん、ぜひさくまつりにいらしてください。
※「まっくらカフェ」は、宮城県身体障害者福祉協会の主催、仙台訓練センターの協力のもと、実施しました。