このページの本文へ
以下は通常ブラウザ用のメインメニューです。
この写真は、1916年10月にドイツで誕生した世界で第1号の盲導犬ユーザーであるポール・フェイエン氏の貴重な写真です。 現在では世界各国で盲導犬が育成され活躍していますが、実は世界における盲導犬育成の歴史は今からちょうど100年前の1916年から始まったばかりなのです。そもそも盲導犬の育成はどのように始まったのか、その歴史を振り返ってみます。
古くはポンペイの遺跡に残された壁画に、杖で歩く人が犬を連れている様子が描かれています。17世紀オランダの書籍には杖を持った人が犬と歩くイラストの下に「忠実な犬が彼を綱で引いている」と書かれています。これらからもわかるように人と暮らす犬が自然に飼い主を助ける様子は昔から見られていたようですが、組織だった盲導犬の育成がはじまったのは、20世紀に入ってからでした。
13世紀 中国の絵画
第一次世界大戦では、多くの軍人や一般市民が命を落とし、重傷を負いました。失明した軍人も後をたたず、当時ドイツで軍用犬の育成を行っていたハインリッヒ・スターリン博士は犬が視覚障害者を手引きできるのではないかと考えつきました。そして政府や犬の訓練士の協力を得て盲導犬として犬を訓練する方法を導き出したのです。
1916年8月、ドイツのオルデンブルグで世界初となる盲導犬訓練学校が設立され、その年の10月には同校から初めての盲導犬ユーザーが誕生し、現代へとつながる組織的な盲導犬の育成がはじまりました。
オルデンブルグの盲導犬訓練学校の外観。大勢の人の中に数頭の犬がいます
1919年には539頭の盲導犬がドイツの失明軍人とともに歩いており、オルデンブルグの盲導犬訓練学校はドイツ国内の9か所に施設をひろげ、毎年およそ600頭の盲導犬を育成したという驚きの事実も記されています。ドイツでの盲導犬育成事業をもととし、1929年に現存する世界最古の盲導犬育成団体であるアメリカのシーイング・アイが誕生、そして1931年にはイギリスでも盲導犬協会が産声をあげます。
最初に盲導犬育成を手掛けたドイツからは1920年代にイギリスやフランス、スペイン、イタリア、アメリカ、カナダ、ロシアなどへ盲導犬が輸出されました。
1989年には、約30か国、約100の盲導犬育成団体が加盟する盲導犬の国際的な組織である国際盲導犬連盟(IGDF)の前身となる国際盲導犬学校連盟が設立されました。
日本に初めて盲導犬が紹介されたのは、1938年です。盲導犬を連れて旅行中のアメリカ人青年ゴルドン氏が日本に立ち寄り、講演してまわったことが最初です。
翌年の1939年、ゴルドン氏と対談した相馬安雄氏の尽力により、失明した軍人のためドイツから4頭のシェパードがやってきました。この4頭が日本で初めての盲導犬として活躍し、日本の盲導犬の歴史が幕を開けました。
1939年ドイツからやってきた4頭のうちの2頭、ボドとリタ。日本最初の盲導犬育成の様子
ハーネスを付けた盲導犬5頭と子犬と思われるシェパード5頭が写っている。ドイツからの4頭を元に国内での盲導犬育成が始まっていることが伺えます
1950年代に活躍した盲導犬「千歳(ちとせ)」のはく製。現在も富士ハーネスに展示しています
日本最初の盲導犬の歴史についてはこちらをご覧ください。
その後、盲導犬育成事業は一時途絶えますが、1948年より塩屋賢一氏が盲導犬育成の研究を開始しました。1957年に河相洌氏が所有していたシェパードを訓練し、国産第一号とされる盲導犬チャンピィが誕生します。
1967年に初代理事長の参議院議員迫水久常氏らにより、日本で初めて厚生省(現・厚生労働省)の認可を得た盲導犬協会として、財団法人日本盲導犬協会(現・公益財団法人日本盲導犬協会)が設立されました。協会の沿革についてはこちらをごらんください。