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健康で盲導犬に向いている性格の両親から、盲導犬候補の子犬が誕生します。生まれた子犬は、生後2か月になるまで、母犬のそばで兄弟姉妹と一緒に過ごします。「盲導犬の里 富士ハーネス」には設備の整った出産施設があり、ここで多くの盲導犬候補犬が誕生します。母犬が衛生的な環境の中で安心して出産するための「分娩棟」、生後2か月まで子犬たちが母犬や兄弟たちと一緒に過ごす「親子棟」、などの施設があります。
盲導犬の里 富士ハーネス
子犬は、生後2か月から1歳になるまでの約10ヶ月間、パピーウォーカーと呼ばれるボランティアの家庭で愛情に包まれながら育ちます。この時期、子犬の「社会化」が重要なポイントとなります。電車や車の音、雨や雪、人混みなど、人間社会で様々な経験をするために、色々な場所に一緒にでかけ、人間と生活する喜びを経験します。たまにはいたずらもするけれど、子犬は家族と共に様々な経験や出会いをする中で、社会や家庭の中で暮らすためのルールを学んでゆきます。その過程で、人間に対する親しみと信頼感が築かれ、将来目の見えない・見えにくい人との生活がスムーズに送れるようになるのです。
パピーウォーカーについて
(1)基本訓練
1歳を過ぎると、いよいよ盲導犬になるために訓練センターに戻ります。訓練では、まず、人と関わることを楽しみながら、犬に「GOOD」という言葉の意味を教えてゆきます。人が求めることが出来たら「GOOD」と褒める、それを繰り返す中で犬は「GOOD」と褒められることが楽しいことだと学習していきます。さらに、シット(座れ)、ダウン(伏せ)、カム(来い)、ヒール(左につけ)、ウェイト(待て)といった指示(コマンド)を出し、そのとおりに動いたら「GOOD」と褒め教えてゆきます。こうした訓練を DE(Dog Education= 犬の教育)と呼んでいます。DEは、単に犬の教育ということだけではなく、犬とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築くための非常に大切な訓練です。訓練期間を通じて毎日、また盲導犬となった後にも行われます。
厳しい訓練というよりも、毎日コツコツと楽しい作業を通して、盲導犬として大切なことを覚えていきます。
(2)誘導訓練
街の中で目の見えない・見えにくい人を安全に誘導するための訓練で、タウンウォーク(TW = TownWalk)と呼ばれています。いろいろな訓練があります。
角・段差を教える
角では、壁などに沿って左に入り込みます。のぼりくだりの段差を見つけたら止まって 教えます。できたら「GOOD」とよく褒めます。
様々な障害物の回避
看板、自転車、駐停車中の車、通行人などの障害物をよけて歩く訓練をします。 また、白杖では、高い場所にある障害物を発見することが難しいですが、盲導犬は高いところにある障害物も避けられるように訓練します。
交通訓練
動いている車・バイク・自転車などに対して危険を察知し、犬自身が進むか進まないかを判断できるよう 訓練します。
駅やエスカレーターでの訓練
電車の乗降や上手にエスカレーターに乗る訓練をします。また、駅のホームでの安全な歩行についても 繰り返し訓練します。
1回目の評価(Task Performance 1=TP1)
担当訓練士がアイマスクをしながら、基本訓練と街での誘導訓練の両方をチェックします。 障害物をきちんと避けたか、角・段差をきちんと教えられたか、などを細かく確認します。 この評価をTP1と呼んでいます。
2回目の評価(Task Performance 2=TP2)
今度は担当訓練士ではなく、別の訓練士がアイマスクをして犬が歩いたことのない場所を歩きます。 これは、誰の指示でもきちんと従うことができるかを確認するためです。 この評価をTP 2と呼んでいます。
3回目の評価(Task Performance Qualified=TPQ)
TP2まで通過した犬が盲導犬ユーザーとの歩行を想定して、最終的な訓練成果を確かめる最終評価です。 この評価に合格した後、パートナーとなる盲導犬ユーザーとのマッチングを行い、共同訓練を始める準備をします。 3回の評価過程で最終的に盲導犬となれるのは全体の3〜4割で、盲導犬には向かないと判断された場合は、 キャリアチェンジをし、別の道を歩むこととなります。
キャリアチェンジ犬について
盲導犬に適している性格
盲導犬には温厚で、人との作業を楽しんでできる(作業意欲が高い)犬が向いています。いろんなところに行っていろんな人や犬など他の動物にも会ったりすることから、攻撃性のない犬であることが重要です。またどこにいてもあまり動じない順応性の高い犬が向いていると言えます。
大きさや力加減、見た目のかわいさなどの面から、現在国内では主に、ラブラドール・レトリーバーが一番多く活躍している犬種です。他には、ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーとゴールデン・レトリーバーの1代雑種(通称、ミックスブリード)もいます。
昔はジャーマン・シェパードが多かったのですが、見た目が非常に精悍で、犬が苦手な人へ威圧感を与えてしまうことがありました。それにくらべてレトリーバー種は、たれ耳でアーモンド型の目という外見に加え、元来狩猟犬として人と一緒に仕事をすることが好きな性格という点からも盲導犬に向いています。
目の見えない・見えにくい人が自分のパートナーとなる盲導犬と生活し一緒に歩くための訓練を共同訓練といいます。約4週間の共同訓練では、訓練センターに宿泊しながら街の中で盲導犬と歩く訓練をします。交通機関の利用の仕方、また、排泄や給餌など犬の世話の仕方についても学んでゆきます。
共同訓練が終わると、晴れて卒業!これからは、目の見えない・見えにくい人と盲導犬との新しい生活がスタートします。まずは自宅に戻り、通勤や買い物など、普段使う道で、訓練士とともに盲導犬との歩行を確認するフォローアップを行います。その後も盲導犬とともに歩き続ける間、定期的に担当訓練士がフォローアップを行ってゆきます。
盲導犬は10歳前後で盲導犬ユーザーと別れて引退します。10歳といっても人間でいえば60歳くらいでまだまだ元気な年齢です。少し早めに引退して、引退犬飼育ボランティアの家で家族の一員として新しい生活を楽しんだり、引退犬のための部屋が整えられている「盲導犬の里富士ハーネス」で仲間たちとのんびり過ごしたりします。もう外出する時にハーネスはつけません。小さい頃から、ずっと人と一緒に暮らしてきた盲導犬たちは、最期の時までみんなに愛されて過ごしていきます。
盲導犬ユーザーは、引退犬飼育ボランティアに引退犬の様子を聞いたり、次の盲導犬と一緒に会いに行くこともあります。盲導犬への感謝の気持ちはずっと続くのです。
悲しいことですが、犬たちにも寿命があります。富士ハーネスには盲導犬慰霊碑があり、亡くなった犬たちの供養をしています。神奈川、仙台、島根あさひの各訓練センターには慰霊碑のレプリカがあり、いつでも花が手向けられるようになっています。この慰霊碑は目の見えない・見えにくい人が慰霊碑に触れて感じることが出来るように工夫されています。また、東京都府中市・慈恵院には協会の墓地もあります。毎年行われる慰霊式では、協会職員や盲導犬ユーザー、ボランティアの皆さんなど多くの人が集まります。
日本盲導犬協会は健康で良質な盲導犬を育成するために、また、動物福祉の精神を尊重して盲導犬の一生に責任を持つために、現役の盲導犬はもちろん、繁殖犬から引退犬まで細やかな医療ケアに力を注いでいます。
毎年、盲導犬ユーザーから狂犬病予防接種(年1回)・混合ワクチン接種(年1回)・フィラリア予防・ノミ・ダニ駆除の実施日をまとめた定期報告書を地元の獣医師の診断とともに提出してもらいます。また盲導犬ユーザー自身が日頃から盲導犬の元気・食欲・排泄の状態を把握し、ブラッシングの際に身体に異常がないかをチェックするよう、担当職員は訓練だけなく健康管理面でもフォローアップします。
生後5ヶ月齢までに3回の混合ワクチンと狂犬病予防接種を全ての盲導犬候補の子犬に実施します。ある程度の月齢になると去勢・避妊手術や眼底検査・股関節のレントゲン検査を行っています。またパピーウォーカーから健康状態や食事内容を明記したレポートを定期的に提出してもらったり、下痢や食欲がないなどの相談があれば、担当職員が適切なアドバイスを行い、必要があれば直接様子を見に行くなど、すぐに対応します。
パピーウォーカーのもとから訓練センターに戻ってきた時点で、メディカルチェック(眼底検査・股関節のレントゲン検査、心電図、血液検査、耳・皮膚などのボディチェック)を行います。その他混合ワクチンや狂犬病予防接種、フィラリア予防薬、ノミ・ダニ駆虫薬等など基本的な健康管理はもちろん、シャンプーやグルーミング、歯磨き、体重測定も日々欠かせません。また犬舎でストレスの少ない生活ができるよう、個々の犬の性格を把握した上で部屋割りを決めたり、フードの量や種類を医師と相談しながら与えたりします。
2009年には神奈川訓練センターの犬舎を改修し、冷暖房を使わずに換気をよくし、犬の免疫力を高め健康を維持する取り組みを進めました。従来の協会内診察医療、大学病院での高度医療に加え、新たに疾病にかかる前に対策をする予防医療の充実を図っています。
少しでも長く元気でいてもらうために、引退犬の健康状態を適切に把握する必要があります。引退犬飼育ボランティアによるケアの下、協会・獣医師と連携して健康管理を行っています。また「盲導犬の里富士ハーネス」で暮らす引退犬たちも、医療設備が整った施設で担当職員が毎日健康チェックを行っています。
盲導犬ユーザーが安心して自分のパートナーをボランティアの方に任せることができるよう、また、ボランティアにとって負担が重過ぎないように、治療に伴う医療費の一部を負担しています。
繁殖犬候補の犬には股関節のレントゲン検査と眼底検査を行い、遺伝性疾患のない犬だけを繁殖犬として登録します。母犬は出産と子育て、父犬は交配という大切な仕事が控えて常に健康状態が万全であるよう、担当職員は繁殖犬飼育ボランティアに体重管理・適度な運動等の指導を行っています。